ボーナス・トラック

  越谷オサム  新潮社

風邪だかインフルエンザだかで2週間以上ネットに書く気力をなくしていた。だが読めなかったのは1週間だけだったので、回復期にはひたすら読み続けていた。その中でもかなりアタリだったのがこの「ボーナス・トラック」だ。

ひき逃げされて幽霊になってしまったのに、死んだ実感はないし、落ち込むのが照れくさいしで、生きていた時と同じぐらい軽いノリの亮太。事件を目撃して、真面目に被害者を救急救命しようとしたばかりに、幽霊の亮太になつかれて困り果てる草野。そこに草野の職場であるハンバーガーチェーンのアルバイトたちが絡んで、恋と霊感と仕事と犯人捜しの青春ドラマが展開する。

さえない下っ端社員の面白くもない日常を細々と描いているのだが、ここに生きている時はやはりまったくさえなかった幽霊がうろつくようになると、俄然面白くなるのが不思議だ。バイトたちも収入よりやりがいを重視するやつが集まると書かれているように、草野の勤め先のモデルとおぼしき某ハンバーガーチェーンの好感度が大幅にアップしそうな爽やかな面々なのだ。

別れの場面では泣けたが、草野も亮太も本当にいいやつだったと、読み終えた後に満足のため息をついた。

ボーナス・トラック