ハサミを持って突っ走る

家庭を顧みない父親とエキセントリックな母親が離婚して、息子のオーガスティンは母親が頼りにしている精神科医に押しつけられる。彼の家族は、怒りを開放し、何物にも囚われず自由に振る舞え、という精神科医の方針に全員が従った結果、家の中も家族関係もハチャメチャであった。

この本は好きではないし、おすすめもしない。共感できる登場人物もひとりもいなかった。あまりにも露骨な表現の部分があるから、たぶん電車の中で読むにはふさわしくないと思う。私が電車のつり革につかまって読んでいるうちにその箇所にさしかかってしまった時は、誰も本をのぞき込まないようにひたすら祈っていた。

それでも、読みながらなにかと気がついたり、考えたりさせられる本だった。こんなに自由なのに檻の中に閉じこめられているような気持ちになるのはなぜだろうと主人公が考える場面では、彼の気持ちがよくわかって切ない気持ちがした。