「愛という試練」 中島義道

同じ中島義道著の「働くのがイヤな人のための本」を読んだばかりなので、同じように哲学的な内容を予想していたが、実際は家族や女性たちとの関係を哲学の視点から考察している本だった。母の怒りの場面など、真に迫った描写が続くため、息苦しくなるほど。両親を看取った後も、妻や息子との間で原家族の葛藤を再現している状況らしく、この本は著者自身が書かかずにはいられなかったのだろうと思えた。

著者の育った家庭は、日本の家族の一面を最大限に誇張したような家族関係である。読んでいて、非常にリアルに感じた。身内の誰彼を思い浮かべたりして、他人事とは思えない。

街を漂っている若者たちも、はっきり自覚したり、表現したりできないけれど、「家族は愛し合わなければならない」という暗黙の掟は息苦しいと感じているのだと思う。

日記に書く順番を間違えたが、一昨日宮城みち子著「キャリアカウンセリング」を読み終えた。キャリアカウンセラーは、会社組織や様々な仕事の知識と人脈に加えて、カウンセリングと臨床心理の知識・経験が必要な仕事である。著者によれば、心理カウンセラーがキャリアについて学ぶよりも、会社組織に属する人間がカウンセリングや臨床心理を学ぶ養成法の方が、日本の現状に合っているそうだ。確かに大学・大学院で心理学を専攻して、そのままカウンセラーを続けている人が、様々な職種や組織内の人間関係について熟知するのはむずかしいだろう。

しかし、転職や職場の人間関係の相談から始まっても、過去の重い問題が浮上してきたり、病気や障害が関わっている可能性が出て来ることもあり、その場合は心理カウンセラーや精神科医へつなぐ必要も出てくる。キャリアカウンセリングだけで解決しようとして「抱え込まない」ことが大切だという。

キャリアカウンセリングの理論や歴史を紹介し、面談の方法や注意点を説明、学校教育への活用など今後の課題にも言及している。キャリアカウンセリングの概観を理解するのに適した本である。