主婦になりきれない女−中流核家族からのRun Away

   橘由子  ブロンズ新社

4年生大学卒の学歴と、数冊の著書を持ち講演もする仕事と、年収1千万円の優しい夫と2人の子ども、一戸建ての家、絵に描いたような幸せな生活だったはずなのに、体重が減り、目がすわり、感情失禁をきたして、著者は離婚することを選ぶ。そして、選んだ仕事は40歳で取得したばかりの運転免許を生かす肉体労働だった。

「子どもに手を上げたくなるとき」や「アダルトチルドレンマザー」などの他の著書を読んでいないためもあり、著者がなぜ離婚しなければならなかったのかについてはいまひとつ理解しきれなかった。しかし、離婚した後の彼女は感情失禁を起こすこともなく、ずっと元気そうだ。

500万円の年収があっても夫が1千万円稼いでいれば家計の柱は夫であり、現在300万円しか稼げなくても、自分の収入で自分と子どもが食べていけるほうがずっと自由で楽しいという気持ちはよくわかる。

そして離婚を決意する前の鬱状態から、自分を見つめることによってではなく、パート先のコンビニでジュースの缶や菓子パンを補充することで回復したというのも、とてもよくわかる。

それでも「あなたのような人がこんな仕事を」という周囲の反応と、自分自身にもある意識を整理するため、彼女はこの本を書いたという。

人間は額に汗する労働と、知性や創造力を発揮する仕事の両方を達成することによって、満足して生きることができる生き物なのだろう。自分の家族や仕事への意識について、気づきたくない部分まで気づかされてしまう本だった。


主婦になりきれない女―中流核家旅からのRun away