主婦になりきれない女−中流核家族からのRun Away
橘由子 ブロンズ新社
4年生大学卒の学歴と、数冊の著書を持ち講演もする仕事と、年収1千万円の優しい夫と2人の子ども、一戸建ての家、絵に描いたような幸せな生活だったはずなのに、体重が減り、目がすわり、感情失禁をきたして、著者は離婚することを選ぶ。そして、選んだ仕事は40歳で取得したばかりの運転免許を生かす肉体労働だった。
「子どもに手を上げたくなるとき」や「アダルトチルドレンマザー」などの他の著書を読んでいないためもあり、著者がなぜ離婚しなければならなかったのかについてはいまひとつ理解しきれなかった。しかし、離婚した後の彼女は感情失禁を起こすこともなく、ずっと元気そうだ。
500万円の年収があっても夫が1千万円稼いでいれば家計の柱は夫であり、現在300万円しか稼げなくても、自分の収入で自分と子どもが食べていけるほうがずっと自由で楽しいという気持ちはよくわかる。
そして離婚を決意する前の鬱状態から、自分を見つめることによってではなく、パート先のコンビニでジュースの缶や菓子パンを補充することで回復したというのも、とてもよくわかる。
それでも「あなたのような人がこんな仕事を」という周囲の反応と、自分自身にもある意識を整理するため、彼女はこの本を書いたという。
人間は額に汗する労働と、知性や創造力を発揮する仕事の両方を達成することによって、満足して生きることができる生き物なのだろう。自分の家族や仕事への意識について、気づきたくない部分まで気づかされてしまう本だった。
ダークホルムの闇の君
出したらしまえない人へ しまおうとするから片づかない
荒井有里 主婦の友社
収納や働き方をテーマに千軒以上を取材した著者が気づいたのは、出したらしまえない人にはその人に合った暮らし方があるということ。収納名人の方法を真似して続かないからといって、自信をなくす必要はない。
机の上に書類が山積みでも仕事ができる人たちや、片づいていなくても居心地よく暮らしている人たちの実例が豊富で参考になる。出したらしまえない人に勇気とヒントをくれる本。2004年12月読了。
私は病気ではない 治療をこばむ心病める人たち
ザビア・アマダー、アンナ=リサ・ジョハンソン 星和書店
統合失調症の患者が受診や継続して薬を飲むことを拒むのは、脳の機能の問題によるものであり、性格のせいでも、問題と直面するのを避けているためでも、まして家族を愛していないからでもない。問題は患者ではなく病気であり、病気をコントロールするのは患者である。病識を持つというのは、病名を受け入れることでなくても、薬を飲むことの効用を認識することでもよい。ゆっくりと話を聞いて信頼関係を築いてから、薬を飲むことのメリット、デメリットについて話し合う。薬を飲めば入院しなくてすむし家族も安心すると本人が理解することにより、患者本人にとっても家族にとっても穏やかな日が訪れると、著者のアマダー博士は述べている。
病識がないため治療をこばむ患者の入院については、精神障害者の人権と患者の治療を受ける権利との関連で論じられている。また早期に治療することで予後の状況が改善することから、入院につなげる方法や、その後の患者との関係回復について具体的な方法を提案をしている。共に精神障害者の家族を持つ2人の著者の体験を織り交ぜた著述には説得力がある。2004年12月読了。
魔法がいっぱい―大魔法使いクレストマンシー外伝
これも「ハウルの動く城」原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズによる作品。4冊あるクレストマンシー・シリーズの外伝である。ちなみにクレストマンシーは個人名ではなく、代々の大魔法使いに与えられる称号のこと。シリーズでは別々の巻に登場したトニーノとキャットが一緒にさらわれる事件が起きる。 2003年4月読了。